桜沢エリカ減算短編小説「青い月とアンビバレンスな愛」
― 朝の日差しが差し込む台所。お皿にトーストが二つ並べられている。
「晃、間に合う?パンぐらい食べていくでしょ?あっ、ちょっとまって、う゛ーん・・・」
ジャムのビンのフタを開けようとして、体をくねらせながらも必死に開けようとするけど開けることが出来ない。
「どれ、貸してみな」
スッと晃の手がジャムのビンを掴む。
グッと晃の腕に力が入りフタがまわるとパカッと音がして簡単に開いた。
「開けるの待ってたら遅刻しちゃうよ」
力こぶを見せておどけてみせる晃に、私は満面の笑みで拍手した。
『今、ここに居てほしい』
息を吸い込み眉間にしわを寄せた。
何かがぐうっと胸を締め付ける。
こんな時、みんなは彼氏に連絡するの?
わたしには、出来ない。
唇をかみ締めおもいっきり力を入れると、マニキュアのフタがパカッと開いた。
『居なくたって、大丈夫だし…』
ふうーっと肩の力を抜いた。