青い月とアンビバレンスな愛 special website | moumoon

桜沢エリカ減算短編小説「青い月とアンビバレンスな愛」

なんだか、落ち着かない気分になって、お気に入りのアロマキャンドルに火を点けようとしたけど、ライターが見つからない。
思いついて引き出しの中にあるライターを手に取ると、晃の吸う煙草の匂いがした―。

この100円ライターは、晃が置いていったものだ。

キャンドルに火を灯し、その明かりを頼りに足の爪に、紺のマニキュアを塗り終えると、今度は薄いパールを重ねていった。
一本ずつ白い指の爪先が艶やかになっていく。
ふと、最後の小指に取り掛かろうとした時、ネイルの筆が爪をはみ出してしまった。
私はそれをどうするわけでもなく、ただぼんやり見つめていた。

『どうして電話くれないの?』

キャンドルの炎で黒く光るその爪は、さっきまでのベビーピンクで塗られた爪とは対照的に、大人っぽくみえる気がする。
部屋全体を照らす炎の明かりが私の影を揺らし、心までも揺らしているように見えた。

『早く眠りたい。別に、かけてこないならもうそれでいい』

ただ―
―眠れない。